俺がこの映画を最初に観たのは小学生の頃だったが、小学生にとってこの映画がただのエロ映画でしかなかった。あれから30年が経過したがその間に5回は観ただろうか
主演の宮本信子は監督の伊丹十三の嫁である。彼の映画の殆どは宮本信子が主演で、まあどれだけ嫁好きなんだと。俺も周りには嫁の写真ばかり撮っていると言われているので、気持ちはわからなくもない
『マルサ』とは国税局査察部の別称で、脱税の話である。その手口は経営者の端くれの俺が観てもかなり古く、伊丹十三自信も「真似されないように意図的に何世代か前の脱税手法を使っている」と語っている
俺は悪役の権藤を演じる山崎努が大好きで、彼が劇中で語る『コップの水』の話は今でも俺の経済観念に大きな影響を及ぼしている。ちなみにこの権藤は足に障害を持っているのだが、これが倫理的観点から社会批判を浴びた。俺は権藤が障害を持っている事で、時間的制約で劇中では描ききれないこのキャラクターが絶妙にバランスしていると感じる
伊丹映画全体に言えることなのだが、何度観ても古さを感じない不思議な魅力が備わっており、今回改めて伊丹十三はやはり天才だったのだなと思い知らされた。彼は1997年にビルから落ちて死亡しているが、彼が生きていれば混迷を深める現代をどのような切り口で描いた映画を作ったのだろうと悔やまずにはいられない