作品名:職業としての小説家
評価:★★★★☆
全体を通して一般論ではなく、あくまで『村上流もの書きとしての態度』を淡々と述べている本
著者の本業がジャズ喫茶の経営だった時に、仕事が終わってから夜中に家の台所で書いた『風の歌を聴け』から現在まで、著者の『小説』に対する態度が書かれている
一貫して主観的な態度で書かれており、著者とタイプが違うもの書きにはほとんど役に立たないだろう
小説は『書いて』と他人に言われて(仕事としての依頼も含む)書くのではなく、『書きたい』と自分の中から欲求が湧き上がってきてから書く
書く時は、その他の事は全て片付けて書くことだけに集中できる環境をつくり、他の仕事は受けない
小説は一日数時間、毎日決まった量だけ書く
俺も思うのだが、世の中にはいくつもの事を並行してこなせる器用な人間がいる。人に頼まれた仕事に適切なモチベーションを設定して取り組める優秀と言われる人間だ
しかし著者はそういうタイプの人ではなく、『自発的かつ集中的』に書くタイプの人だ
俺は幸運にも著者とタイプが似ていたので、この本に書かれている方法論は大変役立つ内容だった。単純に小説家になりたいわけでもないのだが、読み終わってみて、『ものを書く』という欲求に対して、どのような態度で臨めば良いかというモヤッとした疑問に一定の解答を得られた感触を持っている
小説家でもブロガーでも、『もの書き』という大きな集団に属する人間であれば、その大小を問わず読んでみる価値はある作品だ
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